スポンサーサイト
新しい記事を書く事で広告が消せます。
石川智晶「この世界を誰にも語らせないように」(2012) レビュー
このアルバムは、先日相互リンクを頂いたproser様が運営しているアニメと漫画と音楽とというブログの「みんなの名盤」という企画(お互いのイチオシのアルバムを聴いて評価し合う企画)がきっかけで聴くことになりました。別にぼくの方では無理に聴く必要はない、とのことだったのですが、石川智晶氏の楽曲については前々から興味があったので、良い機会だということでレビューさせていただきました。
どうでもいい余談。本当は石川智晶氏の代表曲「アンインストール」の原曲が収録されている1stアルバムを先に聴こうと考えていたのですが、地元のTSUTAYAに寄ったら何故かこちらしか置いていなかったので、1stの方はまたの機会に・・・。
そんなわけで以下全曲レビュー&総評です。
[全曲レビュー]
1. TW ★★★★
ゆったりとした流れを感じさせつつ力強さを感じる詞のフレーズと着実に盛り上がる曲展開でテンションを上げてくれる1曲。間奏後のコード進行が、それまでの流れを汲んだ上で前向きなイメージを持たせているように感じて、特に好きですね。
2. The Giving Tree ★★★☆
ケルト音楽のような雰囲気と哀愁を感じさせる1曲。PSPゲーム「幻想水滸伝 紡がれし百年の時」の主題歌とのこと。サビが少し好みから外れていたのでこの評価ですが、アイリッシュな笛の音と石川氏独特のコーラスの調和が非常にマッチしています。
3. My book ★★★
70~80年代の昭和歌謡を彷彿とさせる静かで重い雰囲気。メロディアスで美しさがありますが少々地味に感じたのでこの評価。
4. 不完全燃焼 ★★★★☆
このアルバムのアッパーチューン。テレビアニメ「神様ドォルズ」のOP曲です。アニメ自体は1話をチラッと見た程度の知識しかないのですが、この楽曲はインパクトが非常に強く、当時何度もヘビロテしていた記憶があります。耽美でキャッチーなメロディに洗練されていてこ気味良い言葉選び、不思議めいたコーラスとギターの柔らかくも切れ味の良いカッティングが香ばしいアクセントを付加していて非常に気持ち良い耳触りです。
5. アンインストール ~僕が最後のパイロットRemix~ ★★★
上記にてチラッと書いた名曲「アンインストール」のセルフリミックス。ファンクでトランス風味という、原曲からはかなり離れたアレンジとなっています。ただ、遊び心のある作品ですが、そこまで振り切れているわけでなく割と無難に石川氏の楽曲として収まっているように感じました。こういう変則的な音楽に自分の耳が肥えている、という理由かもしれません。
6. スイッチが入ったら ★★★☆
こちらはテレビアニメ「神様ドォルズ」のED曲。メロが少々退屈ですが他は悪くない。特に間奏後の展開はやはり安定して美しいですね。
7. 逆光 ★★★★
二胡の音色が引き立つ1曲。M2といい、石川氏の楽曲はこういった民族楽器と相性が良いですね。この曲はPS3/Wiiゲーム「戦国BASARA3」のED曲だそうです。
8. インソムニア ★★★☆
一転して爽やかな曲調。詞も、朝の日常を彷彿とさせる言葉選びが前半に密集しているのが特徴的です。メロもなかなか好みですが、少し展開が退屈なのが惜しいところ。
9. 夏の庭 ★★★★
湿った空気がまとわりついているようなバラード。テレビアニメ「神様ドォルズ」の劇中歌。サビの、同じ言葉を繰り返し抑揚を変えて歌うフレーズが、キャッチーさに加えて表現力の高さがよく現れていて特に好きですね。湿っぽく古臭いギターの音も良いです。
10. それは紛れもなく ~選ばれし者のソリチュード~ ★★★
ゆったりと幻想的なメロを奏でつつ芯のある歌声が響く1曲。悪くないですが、M1、M6あたりと印象が被り、上2曲と比べるとキャッチーさが少なく若干地味に感じたのでこの評価です。
11. 涙腺 ★★★☆
尺八の音が光るバラード。テレビアニメ「戦国BASARA弐」の挿入歌だそうです。こちらもあまりメロが好みではありませんでしたが、間奏後の変態的な展開と情熱的な歌い方には耳を持っていかれました。
12. もう何も怖くない、怖くはない ★★★☆
映画「劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-」の挿入歌。バンドテイストなバラードソングです。王道に沿ったポップさの強い楽曲ですが、節々に「おっ?」と思わせる富んだフレーズが入っており飽きずに聴かせる工夫は流石といったところ。
13. シャーベットスノウ ★★★★
ラストトラックはなんとアカペラ。確かにアカペラは冬を感じさせるところありますよね。他楽曲のような特徴的な不思議コーラスはありませんが、やはりコーラスワークの組み方のセンスは素晴らしいと感じます。優しさと寒さと温もりが丸まった名曲。
[総評]
まず1曲目から最後まで通して感じられたのは、メロディー、歌詞、そして歌声から伝わってくる個性的でアダルティな美しさ、ですかね。特に歌詞は俗っぽさのない匠な言葉選びで、とても質が高く良いものであると感じました。具体的な歌詞の内容の解釈などについては、聴き込みが足りないので言及はしませんが、非常に複雑で芸術的な感性をお持ちの方だな、と思います。サウンド面もなかなかバラエティが豊かで、コード的な特徴もあり、その高い歌唱力を持ち味にどの楽曲も石川智晶色に染め上げられていて、一度聴いたら忘れない、新しい楽曲を聴いても「あ、これは石川智晶氏の楽曲だな」と分かるよう個性の持ち主であると思います。今回のアルバムについて、好まなかった点を挙げると、全体的に楽曲のメリハリが少なくフルで聴くのに少し退屈になってしまう曲が少なからずあった、というのと、単純にメロディーの好みが自分に合わなかった、という点ですかね。逆に良かった点としては、上記で絶賛した内容に加えて、アルバム全体の構成が曲単体と対照的にメリハリがあって、流れるように最後まで聴けたという部分でしょうか。特にM4M5のアップテンポで変則的な楽曲、そしてM13のフワッと地に降りたようなラストが全体の流れにほどよいカーブをつけていて素晴らしいと感じました。ギリギリ自分の中の名盤のラインには届きませんでしたが、良い物を聴かせてもらったという喜びを感じます。ありがとうございました。
★★★☆
CD音源を凌駕する生歌の上手さ・・・ライブ、行ってみたいですね
« THE BOOM「思春期」(1992) レビュー | 倉橋ヨエコ「ただいま」(2005) レビュー »
コメント
どうも、こちらでははじめましてのproserです。1stはおいてなかったとのことですが、もし検索機で調べずに棚を見ただけでしたら、近所のTSUTAYAは最新の3rdがアニメコーナーで、1st、2ndが一般コーナーというおき方をしてたりするので、もしかしたら別の棚にあるかもしれません。実際売上は1stが一番ですし
メロの好み、というのはよくわかりませんが曲単位での評価を見るに結構私と好みが近いかなという印象です。ただ曲がメリハリにかける、というのは私もそう思うといいますか、本当に変則的な展開を使いませんよね、今作ではTWとインソムニアが多少変則的ですが、基本ABサビABサビで間奏のあとにブリッジが入るかどうかくらいの違いしかありませんからね、やっぱり歌詞にある程度重点を置いた聴き方をした方がいいのかと
そしてアルバム構成のメリハリ、という点ではおそらく1stの方が曲が少ない分住み分けがとても上手く出来ていて、その住み分けの上手さこそが僕が至上の名盤と考える理由です。
長くなりましたが、レビューありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。平沢進「救済の技法」は紛うことなき傑作でしたが、レビューするとなるとなかなか手ごわいのでもう少々お待ちください
proser #jDCNsbos | URL | 2014/03/16 22:41 - edit
Re: タイトルなし
proserさん、コメントありがとうございます。
型に嵌った展開は少し面白みに欠けると感じる反面、最後まで安心して聴けるという長所もあるので、仰る通り歌詞に重点を置いた聴き方をすると丁度いいかもしれませんね。今回のアルバムを聴いてより一層石川智晶さんに興味を持ったので、1stもなるべく早く聴けるよう探し歩いてみます。
それと「救済の技法」、気に入っていただけたようで有難いです。レビュー楽しみに待ってますね。今後ともよろしくお願いします。
長いねむけ #- | URL | 2014/03/17 21:34 - edit
コメントの投稿
トラックバック
| h o m e |