音楽を主食とする化物ブログ

 

                                       視聴したアルバムを図々しくちょい辛口で批評したりします

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大高丈宙「Eutopia」(2012) レビュー 

eutopia.jpg


完成したらすぐに放出したくなる性格なのでストックが一向に溜まらない人間、ねむけです。

今回はニコニコ動画にてVOCALOIDを用いた楽曲を発表しているミュージシャン、ヒッキーPこと大高丈宙(おおたかともおき)のメジャー1stアルバム「Eutopia」を紹介します。

大高氏は2008年始め頃から上記サイト上に楽曲を投稿するようになり、現在ではVOCALOID界隈での、所謂人気路線からは外れているがストイックで奇個性な作品を発表しているアーティストが集う、アンダーグラウンドシーンを代表するミュージシャンの一人として支持を受けています。

作風は主にインダストリアルという、暴力的な機械音や電子音、ノイズなどを楽曲に組み込んだ騒がしいものになっており、かなり好みが別れるであろうと思われます。まあ、それだけ突き抜けているからこそアングラシーンの代表と呼ばれる存在になったのだとは感じますが。ちなみに、使用されているVOCALOIDはほぼ全て鏡音リンですね。

この方の楽曲は基本的に短く、ほとんどが2分を切るほどなので、その分このアルバムは曲数が1ディスクで27曲ととても多いです。

よって、この記事も少々長めになってしまうかと思われますが、ご了承ください。

というわけで全曲レビューと総評に移ります。


[全曲レビュー]

1. 空襲の音  ★★★★

不協和音とノイズの中で虚空に向かって吐き散らかすボーカル。息をつく暇がないほどアグレッシブに展開していきます。時々チラリと覗くメロディアスなフレーズが絶品。日本の有名所だと、神聖かまってちゃん系の作風に近いところがありますが、うーむ、それでもまだまだ遠いですね。唯一無二の路線だと思います。

2. 最初から斜陽  ★★★★

これはもう思春期に聴いたら衝撃でしばらく痺れが取れないであろうくらいの強い圧力を感じます。思春期に出合いたかった。ボーカルの叫び声が凄まじい。人工音声だということを忘れるくらいにビリビリと刺さります。

3. ハイブリッド幼女(第二形態)  ★★★★☆

こんなタイトルですが非常にメロディーが良く、アレンジもわかりやすくて聴きやすい。歌詞からも大高氏の苦悩が滲み出ていて、心に来ます。ちょうど中盤からの展開がめっちゃ切なくて好き。ああ、もっとこのグルグルと渦巻く思いを文章にしたいのにできないもどかしさよ・・・。

4. 捨てられた幸福  ★★★★

キャッチーなイントロから譜割りもクソもないボーカルライン、それなのにキャッチーさはずっと変わらない。理屈の通らない素晴らしい感性です。この若さ溢れるネガティブで反社会的な歌詞も、突き抜けていて好きです。言葉選びも面白い。

5. 青黒い穴  ★★★★

比較的耳に優しい1曲。メロディアスさは少ないもののやはり展開が面白い。良い意味で聴いていて苦しい曲。最後の歌詞以降の展開は開放感と束縛感の両方が混ざったような不思議な感覚でした。

6. りゃー  ★★

大高氏、Sさん(おそらくレーベルの偉い人)、大丈夫P氏(そのうちこの方のアルバムも紹介します)がガヤガヤしつつ鏡音リンが愛してるーとかなんとか歌ってる、すごく皮肉交じりの1曲。面白すぎる。

7. 雑踏14  ★★★

メロディアス性は薄れているもののM2と大体同じ印象を受けました。この歌詞からサビの「さあ生きろ」というフレーズにつながるのが良いですね。

8. mandara berobero haichatta blues  ★★★

このアルバムの中では少し地味な印象ですが、やはり展開の裏切り方が面白いと感じます。一見、一方通行に聴こえますが、実際は物凄い数の引き出しを持っている。

9. 六月病  ★★★★

暴発しそうなストレスをそのまんま楽曲に投影しているから、聴いていると自分もそんな経験を味わっているような思いになって息苦しくなります。そんなこと、並のセンスじゃできない。凄いことですよこれ。

10. くうきのぐんか  ★★★

超ハードなブレイクコア的な。いや、他の楽曲も大体そうなので今更すぎる説明ですが。前曲の歌詞がストレートだったのに比べてこちらは抽象的というか、印象派な雰囲気がありますね。残念ながら意味を汲み取ることはできず。

11. フリータイムブランク  ★★★☆

1回じゃ処理しきれないほどの情報量の多さ。露骨にポップな部分を出してきたのですが、それがまあ胡散臭いというか、裏のどす黒いものが透けて丸見えなのが面白い。

12. センセーショナルの翌年  ★★★★

4分44秒という長大作(当社比)。MVを見れば一目瞭然ですが、あの東北大震災時の心境を綴った歌ですね。他の楽曲と比べると音のインパクトは少なく、淡々と弾き語りに近い仕上がりになっていますが、なんというか、曲もとい歌詞の雰囲気に重みを乗せるセンスが非常に良いというか、心にグイっとくる感覚があります。友川かずき氏の「生きてるって言ってみろ」を初めて聴いた時と似た感覚ですかね。衝撃も重みもあちらの方が上だとは思いますが、ボカロでこれを表現できるって、めちゃめちゃすごいことだと思いますよ。

13. mtzv  ★★★★

こちらも歌詞が思春期に振り切れてていいですね。オケも相変わらず面白い。型にハマらずとも型をよく理解していることが伝わってくる構成なので、安心して聴けるとこありますね。

14. GINGA  ★★★☆

インスト。ぐっちゃぐっちゃと。こんな感じで長い作品聴いてみたいですね。

15. アリセにかけたい  ★★★★

やりたい放題ですね、やりたい放題。なんでこんなめちゃくちゃでこんなキャッチーになるんだ。むしろこれをキャッチーだと感じる自分の感性の問題なのか。

16. 発火  ★★★

こちらは逆にもうひと展開欲しかった。あと30秒ほど。いや、これだけすき放題展開しておいてもうひと展開ってのもおかしな話ですが。毒されてんのかな。

17. manuscript.org  ★★★★

めちゃめちゃポップでセンチメンタルな曲ですね。「まだ叫んでるから」の部分の超キャッチーで切ないメロが特に好きです。

18. 投薬口  ★★★

パンク的でカッコいい曲ですが、ちょっと展開がピンとこなかったですね。

19. 死に体ヤワ  ★★★☆

こちらも心情をそのまま殴りつけたような曲。共感とはまた違うものですが、「ああ、その感情をそういう風に表すことができるのか、カッコいいな」と思える魅力がありますね。

20. 魔ゼルな規リン -recognized edit-  ★★★★

曲名は日本のアーティスト、魔ゼルな規犬からきてますね。リスペクトソングらしいです。最近ではお互い交流したりと親睦も深まってたり。サビがとても綺麗で印象に残ります。

21. レイジースリーピー  ★★★☆

他楽曲と比べてもかなりアバンギャルドで暴力的。これで更にメロディアスさが増幅されればとても好みなんですが。

22. からっぽの椿象  ★★★☆

曲的には耳の休憩になる大人しい曲。ジリジリとした哀愁を感じます。

23. 屠殺ごっこの後で  ★★★★

強烈に皮肉が効いていて素敵。まあ、皮肉というよりも事実を隠喩で表現しているといった方が正しいかもしれませんが。言葉選びのセンス、非常に好きですね。

24. レインコート/憧憬/嫌悪/理解  ★★★★

曲のポップセンスは勿論のこと、ボーカルの叫びの表現が素晴らしい。よくぞまあここまで体現することができたもんだと感動します。

25. 敗廊の音  ★★★★☆

曲の長さはおよそ8分。長大作とかそんなレベルじゃないくらい長い。ハイブリッド幼女6人分ですよ。今までの大高氏の作風を覆した傑作。いや、包括したとも言えますね。どちらも感じる。今までの、短い中に詰め込まれた怒涛のプログレッシブ要素が収まるべき枠内に収まり、且つ既存のプログレに嵌らない大高氏の中にしか存在し得ない悲哀が篭っています。8分があっという間の先鋭的ミュージカル。

26. neuter


繋ぎ。時を刻む。

27. 日記、日記、日記、白紙  ★★★★

ラストトラック。心なしかとても明るい歌のように聞こえる。歌詞は変わらず思春期ネガティブど直球ですが、詞に反して生きることへの活力を感じます。喜劇的とすら思えてしまう。とても後味すっきりで、この濃すぎるアルバムに相応しい締めでした。


[総評]

総じて雑音と音楽の境界線スレスレを這うような、というよりも境界を行ったり来たりしているような楽曲群。正直、通して聴くのはかなーり疲れます。しかしこれだけ暴力的だからこそ歌詞の、普通では伝わらない部分まで伝わるような感覚に陥ることができるのだと思います。そして特筆すべきはこのむちゃくちゃなどの楽曲にも確かに含まれているポップ性。音楽性を見るにメルツバウなどのノイズ系アーティストから影響を受けていることは確かなのですが、それ以上にこのポップな部分にとんでもなく密度の高い他アーティストからの影響を感じます。事実、大高氏はその年齢の若さ(確か20代中頃くらい)に見合わないほどの雑食っぷりが散見され(この人がアルバムレビューブログなんか始めた日には、もうそれは大変なことになるであろうと確信するほど)、その全ての楽曲を吸収して裏打ちされたのがこのポップさだと思うと、非常に恐ろしく背筋が凍るレベルです。なぜこの人が大衆に評価されないのか、それはまあ、このぶっ飛んだ展開の楽曲と非常に陰鬱でドロドロした歌詞を好んで聴こうと思える人が少ないからなのでしょう。逆にこの人が大々的に評価されるような時代がくるとすれば、それはもうこの人間社会の終わりを意味していると思います。もちろんこれらのことは全て褒め言葉で、ぼくはこの場でこのアルバムを堂々と名盤として紹介させていただきたいと思います。人工音声を用いてここまで自らの情動を表現し、それを微塵も妥協のない楽曲群として収めた大高氏を評価しないはずがない。今後の活動にも期待したいです。それと、こんな面白い人のCDを全国流通させたVOCALOIDレーベル、GINGAにも注目していきたいですね。

★★★★





今アルバムの購入特典である大高丈宙ミニベストアルバム「ヒッキーP・マキシマム・ベスト!」のレビューはこちら
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Posted on 2014/03/06 Thu. 04:04 [edit]  /  TB: 0  /  CM: 0

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