空気公団「ぼくらの空気公団」(2010) レビュー
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空気公団は1997年に結成され、度々の活動休止やメンバーの交代を行った後、現在山崎ゆかりさん、戸川由幸さん、窪田渡さんの3人でバンド活動を行っております。
今作は数ある楽曲の中からファン投票で選ばれた12曲を収録したセレクションベスト。
人気楽曲だけでなく廃盤やLPでのみ販売されていた楽曲も再収録されているため、新規の方には勿論、ファンにも優しいベストとなっています。
それでは以下全曲レビュー&総評。
・・・と言いたいところですが、全曲レビュー、アーティストによっては書くのにすごく時間がかかってしまい更新ペースに支障をきたしまくっているので、これからは「任意」という形を取りたいと思います。
全曲レビューできそうなアルバムは今までと同じくしますが、言葉選びに詰まってしまう作品はとりあえず★とアルバム全体の感想だけ付けて放出したいと思います。
というわけで今作はその形を取らせていただきますのでご容赦ください。
[全曲レビュー(評価のみ)]
1. 夕暮れ電車に飛び乗れ ★★★★☆
2. 旅をしませんか ★★★★★
3. 青い花 ★★★★☆
4. 田中さん、愛善通りを行く ★★★★
5. レモンを買おう ★★★★
6. とおりは夜だらけ ★★★★
7. 呼び声 ★★★★
8. 窓越しに見えるは ★★★★
9. 思い出俄爛道 ★★★★☆
10. ふたり ★★★★
11. おはよう今日の日 ★★★★☆
12. コーヒー屋のおねえさん ★★★★
[総評]
どこまでも柔らかく透き通ったサウンドと歌声。郷愁感のあるその楽曲は松任谷由実や大貫妙子といった偉大なミュージシャンの影響を強く感じさせますが、不思議とそれはそれ、これはこれといった線引きが無意識になされていて、このアーティストに取って代われるアーティストはいないと思わせる。そんなバンドが空気公団です。
ひたすら恋に焦がれるでもなく、意識を広げに広げて人類を謳うでもなく、ただ日常を切り取っているだけでこれほどクリエイティブで人の心を打ち付ける音楽はやはり唯一無二。いわば情景を唄うアーティストですかね。
そして何より、山崎ゆかりさんのボーカルが素晴らしい。どの楽曲も初聴でフワッと心を包み込んでしまうのは、ひとえに彼女の天性の歌声のせいではないかと自分は思います。一見癖のないようで実は凄く癖の強いボーカルは、言い方はアレですが、さながら無害そうに見えて中毒性の強いソフトドラッグのようなものではないでしょうか。自分で言っておいてなんですが本当に酷い例えですね。要はこういう人を「歌姫」と呼ぶべきなのではないかなと思ったりしております。それだけ素敵な魔性の歌声。
さて、今作は上記の通り一曲一曲のレビューをしていませんが、これではどの楽曲がオススメなのかわかりづらいかもしれません。そこでズバリ言いますと、どれでも良いです。どれから聴いてもハマる人はずっぽりハマります。それくらい安定して名曲ばかりのアルバム。これぞベストといった感じのベストですね。とは言ったものの、やはり最初に聴くならこのアルバムの1~3曲目。特に2曲目の「旅をしませんか」でしょうか。どうぞ、旅のお供にご一聴を。
★★★★☆
今作は数ある楽曲の中からファン投票で選ばれた12曲を収録したセレクションベスト。
人気楽曲だけでなく廃盤やLPでのみ販売されていた楽曲も再収録されているため、新規の方には勿論、ファンにも優しいベストとなっています。
それでは以下全曲レビュー&総評。
・・・と言いたいところですが、全曲レビュー、アーティストによっては書くのにすごく時間がかかってしまい更新ペースに支障をきたしまくっているので、これからは「任意」という形を取りたいと思います。
全曲レビューできそうなアルバムは今までと同じくしますが、言葉選びに詰まってしまう作品はとりあえず★とアルバム全体の感想だけ付けて放出したいと思います。
というわけで今作はその形を取らせていただきますのでご容赦ください。
[全曲レビュー(評価のみ)]
1. 夕暮れ電車に飛び乗れ ★★★★☆
2. 旅をしませんか ★★★★★
3. 青い花 ★★★★☆
4. 田中さん、愛善通りを行く ★★★★
5. レモンを買おう ★★★★
6. とおりは夜だらけ ★★★★
7. 呼び声 ★★★★
8. 窓越しに見えるは ★★★★
9. 思い出俄爛道 ★★★★☆
10. ふたり ★★★★
11. おはよう今日の日 ★★★★☆
12. コーヒー屋のおねえさん ★★★★
[総評]
どこまでも柔らかく透き通ったサウンドと歌声。郷愁感のあるその楽曲は松任谷由実や大貫妙子といった偉大なミュージシャンの影響を強く感じさせますが、不思議とそれはそれ、これはこれといった線引きが無意識になされていて、このアーティストに取って代われるアーティストはいないと思わせる。そんなバンドが空気公団です。
ひたすら恋に焦がれるでもなく、意識を広げに広げて人類を謳うでもなく、ただ日常を切り取っているだけでこれほどクリエイティブで人の心を打ち付ける音楽はやはり唯一無二。いわば情景を唄うアーティストですかね。
そして何より、山崎ゆかりさんのボーカルが素晴らしい。どの楽曲も初聴でフワッと心を包み込んでしまうのは、ひとえに彼女の天性の歌声のせいではないかと自分は思います。一見癖のないようで実は凄く癖の強いボーカルは、言い方はアレですが、さながら無害そうに見えて中毒性の強いソフトドラッグのようなものではないでしょうか。自分で言っておいてなんですが本当に酷い例えですね。要はこういう人を「歌姫」と呼ぶべきなのではないかなと思ったりしております。それだけ素敵な魔性の歌声。
さて、今作は上記の通り一曲一曲のレビューをしていませんが、これではどの楽曲がオススメなのかわかりづらいかもしれません。そこでズバリ言いますと、どれでも良いです。どれから聴いてもハマる人はずっぽりハマります。それくらい安定して名曲ばかりのアルバム。これぞベストといった感じのベストですね。とは言ったものの、やはり最初に聴くならこのアルバムの1~3曲目。特に2曲目の「旅をしませんか」でしょうか。どうぞ、旅のお供にご一聴を。
★★★★☆
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category: 日本 - ポップス
ピノキオピー「しぼう」(2014) レビュー
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ピノキオピーさんのアルバムは去年の大晦日にも「2013年で一番良かったアルバム」として自主制作4thアルバム「遊星まっしらけ」を紹介させていただきました。(リンクはこちら)
今回のこのアルバムは今月3日にリリースされたばかりですが、やはり「2014年で一番良かったアルバム」として今年最後のこの日に紹介させていただきます。
と言っても今年発売されたアルバムはそれほど数を聴いていないので、「暫定的に」という言葉を念のために付加しておきたいと思いますね。
それでは以下全曲レビュー&総評です。
[全曲レビュー]
1. しぼう ★★★★
ゆったりとした流れのある優しい水底に沈んだような前半から、突如として狂ったようにギター、ドラム、果てにはボーカルが暴れだす。メルヘンチックな世界観に没入させて、ハッと現実を突きつけるようなピノキオピーらしいオープニング。今作のテーマを決定づける印象的な一曲です。うおうおうお
2. はじめまして地球人さん ★★★★☆
アップテンポでポップな一曲。来年発売される3DSゲームソフト『初音ミク Project mirai でらっくす』のテーマソングとして書き下ろされた楽曲です。ピノキオピーさんはよくアルバム書き下ろし曲にこのような爽やかで明るい曲を入れたりするのですが(1stメジャーの「ジゼミ・イン・ザ・アンダーグラウンド」然り、自主制作2ndの「ファンタジーへようこそ」然り、自主制作3rdの「とうめい」然り)、今作は珍しくシングルカットされるようです(ゲーム発売に合わせてなので来年初頭になるでしょう)。「明るく爽やか」といってもやはり歌詞はピノキオピー氏の真骨頂。人間を客観的に捉え、ハッとするフレーズが随所に埋め込まれています。それでもなお愛そうとするその姿勢は、やはり尊敬してやまない。
3. よいこのくすり ★★★★☆
ポップでキャッチーながらも哀愁を感じる一曲。この諦観漂う感じは氏の3rdアルバム「遊星まっしらけ」の表題曲を彷彿とさせますね。サビの叙情的な歌詞にホロリとさせられるのは勿論のこと、A~Cメロの歌詞表現に唸らされます。
4. 絵の上手かった友達 ★★★★
シンセのリフが素敵な、氏には珍しいストレートなラブソング。ストレートと言っても、歌詞の言葉選びがストレートというだけで内容は「男の子をフッた女の子側の視点」という捻くれ具合。3rdのM6「アッカンベーダ」でもそうですが、何故男性のあなたが年頃の女の子の心的表情をここまでリアル且つダイナミックに表現できるのか・・。名曲です。
5. すろぉもぉしょん ★★★★★
今作のベストナンバー。ミクやゆっくりのような電子音声によく合ったデジタルなサウンドながら、昭和歌謡的で懐かしさを感じさせるメロディーとお祭り騒ぎなノリの良さで、一発で心を鷲掴みにされました。何より抜きん出て良いのは歌詞ですね。なんというか、今までのピノキオピー氏の歌詞は、自身の経験を元にした主観的なものが少ない印象があったんですよね。どれも他の既製物や人の行動を傍から眺めて、そっから感じ取ったことを描いているという印象がありました(いわば天界から人間界を見下ろして曲を作っている感じですね)。と言ってもそれは決して悪いことではなく、それ故にぼくは彼の鋭い観察眼に強く惹かれたのですが。しかし今作「すろぉもぉしょん」で、彼は地に足を下ろしました。そんな彼の人間臭さが全面に出ていると感じます。そして足を下ろしただけでなく、それまで観察してきたものを全て肯定し、許してしまいました。「そんなもんだ」と。ついにここまで来てしまったのか。一体こっからどこへ向かうつもりなんだあなたは!・・・とだんだん熱くなってきたところでどれだけこの曲が自分の心を動かしたのかはもうお分かりになられたと思うので、この辺にしておきます。
6. Last Continue ★★★★☆
エレクトロ成分マシマシの一曲。原曲は2009年3月頃に発表された氏の自作曲「Continue」。2010年2月頃に発表され2ndアルバムにも収録された「Re:Continue」を含め2度目のリメイクが本作となります。エレクトロ成分が増え、大幅にアレンジが加えられた本作・・・簡潔にいうと、アレンジでここまで詞の印象が変わるのか!と改めて驚かされました。正直、原曲と一度目のリメイクまでは氏の楽曲の中ではあまり目立たない印象を持っていたんです。割と明るめの雰囲気で「あの日に戻れたらいいのにな」というストレートに後ろ向きな歌詞、加えてサビのメロと歌声が単調だったので、チープな印象を持ってしまっていました(ギターソロはとても好き)。しかし今作は一転して低音のシンセベースが畝ねるシリアスな雰囲気。曲もメロも展開に幅があり飽きさせない。何よりボーカルの調整と歌詞のマッチ具合が素晴らしい。そして改めて「Re:Continue」を聴くと、また印象が変わってくるのがわかります。見事に生まれ変わり、曲として完成した一曲だと思います。
7. たりないかぼちゃ ★★★★☆
ファミマ×VOCALOIDのハロウィン企画で制作された一曲。ブラスを多用したビッグバンド風×ピコピコ音楽といった面白い構成。曲調もお祭り騒ぎで楽しいです。その一方歌詞の方はというと・・・ああなるほど、「たりない」はそっちの「たりない」なんですね。相変わらず捻くれていて素晴らしいです。ピノキオピー氏のこういう歌詞は「皮肉」と捉える人も多いですが、ぼくとしては皮肉でもなんでもなく、氏の「本心」なのではないかなあと思ったりしますが、どうなんでしょうか。全てを理解した上であえてそっちへ行きたいなんて、とても素敵じゃありませんかね。それはまあ置いといて、こっちの意味での「たりない」は最近だと阿部共実先生の漫画「ちーちゃんはちょっと足りない」が印象的で耳に残っていますが、その辺りからヒントを得たのでしょうか。そちらも個人的には気になるところです。
8. ヒーローが来ない ★★★★☆
アルバム書き下ろし曲。こちらもM2と同じく「明るく爽やか」な曲調。題材はヒーローものなのにひたすら退廃的な現実を突きつけて辛い曲です。こんなに思いつめているのにヒーローは来ない・・・どうして・・・。曲の展開がとても好き。
9. ニナ ★★★★★
こちらで紹介済み。リマスタリングされていて音がより一層キラキラと輝いて聴こえます。M8→M9→M10の流れが素晴らしい。
10. ラブ イズ オノマトペ ★★★★★
ドンドコドコドコな一曲。サウンドはエレクトロハウスを土台にした感じのダンス系ミュージックですが、ダンスというより音頭といった方がしっくりくるほど日本っぽさを感じますね。曲名の通りオノマトペが歌詞の随所、というか4割ぐらいを占めていて、その使いどころやチョイスがやはりセンスを感じさせます。純真な無邪気さが揺らいでいくような描写が鋭く恐ろしい。
11. 100年前の僕、100年後の君 ★★★★
一転してブレイクコアのフレーバーが組まれたシリアスな一曲。こちらもアルバム書き下ろし曲。珍しく字余りしそうなほど歌詞のフレーズが長く、表現もストレートで、その分だけ曲の必死さを感じさせます。一歩間違えると不協和音になってしまいそうなメロディの不安定さが、詞世界の感情の不安定さを表しているようで逸品。
12. こどものしくみ ★★★★★
こちらで紹介済み。M9と同じく。
13. こあ ★★★★★
ラストもアルバム書き下ろし曲。曲長が8分越えと氏の中でもダントツで長い曲です。それに反し歌詞の量は他楽曲の2~3分の1ほど。しかしその少ない歌詞と、一音一音大事そうに紡ぎ出されたサウンドが、今作のテーマ全てを表しているかの如く熱い情報量が込められていて、まさに傑作と呼べるでしょう。おそらくこの5年半、彼が初めて曲を発表してからここまでの道、その経験がこの楽曲を作り上げたのだと感じます。M5をベストナンバーと綴りましたが、今作もまた、ベストナンバーです。
[総評]
「死生観」という大きなテーマに真っ向から挑んだ今回のアルバム、その中に込められた思いは100%理解はできずとも十二分に自分の死生観を揺るがすほどの強さを持っていました。現実と幻想を繋げ広げたところにある彼の死生観は、どうしようもなく魅力的で、諦めと希望が入り混じったような複雑な、しかしどこか居心地が良い、そんな心情をもたらしてくれました。何より今作で感じ取った彼の「客観性」と「主観性」の融合は、更にステージを一段上げたような、いや、むしろ今までのステージを乗り越え新しいステージに一歩踏み出し挑戦を始めたような、そんな素敵な未来さえ感じさせます。VOCALOIDの魅力を最大限にまで磨き上げ、これから彼は一体どういった道を進んでいくのでしょう。非常に楽しみです。それでは皆さん、良いお年を。
★★★★★
今回のこのアルバムは今月3日にリリースされたばかりですが、やはり「2014年で一番良かったアルバム」として今年最後のこの日に紹介させていただきます。
と言っても今年発売されたアルバムはそれほど数を聴いていないので、「暫定的に」という言葉を念のために付加しておきたいと思いますね。
それでは以下全曲レビュー&総評です。
[全曲レビュー]
1. しぼう ★★★★
ゆったりとした流れのある優しい水底に沈んだような前半から、突如として狂ったようにギター、ドラム、果てにはボーカルが暴れだす。メルヘンチックな世界観に没入させて、ハッと現実を突きつけるようなピノキオピーらしいオープニング。今作のテーマを決定づける印象的な一曲です。うおうおうお
2. はじめまして地球人さん ★★★★☆
アップテンポでポップな一曲。来年発売される3DSゲームソフト『初音ミク Project mirai でらっくす』のテーマソングとして書き下ろされた楽曲です。ピノキオピーさんはよくアルバム書き下ろし曲にこのような爽やかで明るい曲を入れたりするのですが(1stメジャーの「ジゼミ・イン・ザ・アンダーグラウンド」然り、自主制作2ndの「ファンタジーへようこそ」然り、自主制作3rdの「とうめい」然り)、今作は珍しくシングルカットされるようです(ゲーム発売に合わせてなので来年初頭になるでしょう)。「明るく爽やか」といってもやはり歌詞はピノキオピー氏の真骨頂。人間を客観的に捉え、ハッとするフレーズが随所に埋め込まれています。それでもなお愛そうとするその姿勢は、やはり尊敬してやまない。
3. よいこのくすり ★★★★☆
ポップでキャッチーながらも哀愁を感じる一曲。この諦観漂う感じは氏の3rdアルバム「遊星まっしらけ」の表題曲を彷彿とさせますね。サビの叙情的な歌詞にホロリとさせられるのは勿論のこと、A~Cメロの歌詞表現に唸らされます。
4. 絵の上手かった友達 ★★★★
シンセのリフが素敵な、氏には珍しいストレートなラブソング。ストレートと言っても、歌詞の言葉選びがストレートというだけで内容は「男の子をフッた女の子側の視点」という捻くれ具合。3rdのM6「アッカンベーダ」でもそうですが、何故男性のあなたが年頃の女の子の心的表情をここまでリアル且つダイナミックに表現できるのか・・。名曲です。
5. すろぉもぉしょん ★★★★★
今作のベストナンバー。ミクやゆっくりのような電子音声によく合ったデジタルなサウンドながら、昭和歌謡的で懐かしさを感じさせるメロディーとお祭り騒ぎなノリの良さで、一発で心を鷲掴みにされました。何より抜きん出て良いのは歌詞ですね。なんというか、今までのピノキオピー氏の歌詞は、自身の経験を元にした主観的なものが少ない印象があったんですよね。どれも他の既製物や人の行動を傍から眺めて、そっから感じ取ったことを描いているという印象がありました(いわば天界から人間界を見下ろして曲を作っている感じですね)。と言ってもそれは決して悪いことではなく、それ故にぼくは彼の鋭い観察眼に強く惹かれたのですが。しかし今作「すろぉもぉしょん」で、彼は地に足を下ろしました。そんな彼の人間臭さが全面に出ていると感じます。そして足を下ろしただけでなく、それまで観察してきたものを全て肯定し、許してしまいました。「そんなもんだ」と。ついにここまで来てしまったのか。一体こっからどこへ向かうつもりなんだあなたは!・・・とだんだん熱くなってきたところでどれだけこの曲が自分の心を動かしたのかはもうお分かりになられたと思うので、この辺にしておきます。
6. Last Continue ★★★★☆
エレクトロ成分マシマシの一曲。原曲は2009年3月頃に発表された氏の自作曲「Continue」。2010年2月頃に発表され2ndアルバムにも収録された「Re:Continue」を含め2度目のリメイクが本作となります。エレクトロ成分が増え、大幅にアレンジが加えられた本作・・・簡潔にいうと、アレンジでここまで詞の印象が変わるのか!と改めて驚かされました。正直、原曲と一度目のリメイクまでは氏の楽曲の中ではあまり目立たない印象を持っていたんです。割と明るめの雰囲気で「あの日に戻れたらいいのにな」というストレートに後ろ向きな歌詞、加えてサビのメロと歌声が単調だったので、チープな印象を持ってしまっていました(ギターソロはとても好き)。しかし今作は一転して低音のシンセベースが畝ねるシリアスな雰囲気。曲もメロも展開に幅があり飽きさせない。何よりボーカルの調整と歌詞のマッチ具合が素晴らしい。そして改めて「Re:Continue」を聴くと、また印象が変わってくるのがわかります。見事に生まれ変わり、曲として完成した一曲だと思います。
7. たりないかぼちゃ ★★★★☆
ファミマ×VOCALOIDのハロウィン企画で制作された一曲。ブラスを多用したビッグバンド風×ピコピコ音楽といった面白い構成。曲調もお祭り騒ぎで楽しいです。その一方歌詞の方はというと・・・ああなるほど、「たりない」はそっちの「たりない」なんですね。相変わらず捻くれていて素晴らしいです。ピノキオピー氏のこういう歌詞は「皮肉」と捉える人も多いですが、ぼくとしては皮肉でもなんでもなく、氏の「本心」なのではないかなあと思ったりしますが、どうなんでしょうか。全てを理解した上であえてそっちへ行きたいなんて、とても素敵じゃありませんかね。それはまあ置いといて、こっちの意味での「たりない」は最近だと阿部共実先生の漫画「ちーちゃんはちょっと足りない」が印象的で耳に残っていますが、その辺りからヒントを得たのでしょうか。そちらも個人的には気になるところです。
8. ヒーローが来ない ★★★★☆
アルバム書き下ろし曲。こちらもM2と同じく「明るく爽やか」な曲調。題材はヒーローものなのにひたすら退廃的な現実を突きつけて辛い曲です。こんなに思いつめているのにヒーローは来ない・・・どうして・・・。曲の展開がとても好き。
9. ニナ ★★★★★
こちらで紹介済み。リマスタリングされていて音がより一層キラキラと輝いて聴こえます。M8→M9→M10の流れが素晴らしい。
10. ラブ イズ オノマトペ ★★★★★
ドンドコドコドコな一曲。サウンドはエレクトロハウスを土台にした感じのダンス系ミュージックですが、ダンスというより音頭といった方がしっくりくるほど日本っぽさを感じますね。曲名の通りオノマトペが歌詞の随所、というか4割ぐらいを占めていて、その使いどころやチョイスがやはりセンスを感じさせます。純真な無邪気さが揺らいでいくような描写が鋭く恐ろしい。
11. 100年前の僕、100年後の君 ★★★★
一転してブレイクコアのフレーバーが組まれたシリアスな一曲。こちらもアルバム書き下ろし曲。珍しく字余りしそうなほど歌詞のフレーズが長く、表現もストレートで、その分だけ曲の必死さを感じさせます。一歩間違えると不協和音になってしまいそうなメロディの不安定さが、詞世界の感情の不安定さを表しているようで逸品。
12. こどものしくみ ★★★★★
こちらで紹介済み。M9と同じく。
13. こあ ★★★★★
ラストもアルバム書き下ろし曲。曲長が8分越えと氏の中でもダントツで長い曲です。それに反し歌詞の量は他楽曲の2~3分の1ほど。しかしその少ない歌詞と、一音一音大事そうに紡ぎ出されたサウンドが、今作のテーマ全てを表しているかの如く熱い情報量が込められていて、まさに傑作と呼べるでしょう。おそらくこの5年半、彼が初めて曲を発表してからここまでの道、その経験がこの楽曲を作り上げたのだと感じます。M5をベストナンバーと綴りましたが、今作もまた、ベストナンバーです。
[総評]
「死生観」という大きなテーマに真っ向から挑んだ今回のアルバム、その中に込められた思いは100%理解はできずとも十二分に自分の死生観を揺るがすほどの強さを持っていました。現実と幻想を繋げ広げたところにある彼の死生観は、どうしようもなく魅力的で、諦めと希望が入り混じったような複雑な、しかしどこか居心地が良い、そんな心情をもたらしてくれました。何より今作で感じ取った彼の「客観性」と「主観性」の融合は、更にステージを一段上げたような、いや、むしろ今までのステージを乗り越え新しいステージに一歩踏み出し挑戦を始めたような、そんな素敵な未来さえ感じさせます。VOCALOIDの魅力を最大限にまで磨き上げ、これから彼は一体どういった道を進んでいくのでしょう。非常に楽しみです。それでは皆さん、良いお年を。
★★★★★
category: VOCALOID
rei harakami「わすれもの」(2006) レビュー
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ハラカミは1970年広島で生まれ、1996年にメジャーデビュー。以降CM音楽製作や他アーティストのプロデュースやリミックスなどで高い評価を受けていた他、シンガーソングライターの矢野顕子氏とユニットを組むなど数多くの活動を手がけていました。
しかし2011年の7月27日に脳出血のため急逝。享年40。
未だに彼の死を受け入れきれていない自分ですが、この場をもって改めて冥福を願いたいと思います。
ハラカミの作風は主にテクノ・エレクトニカ系に傾倒しており、オリジナルアルバムの他にはリミックスアルバムなども出していて、どれもユニークな作品が取り揃っています。
そんな中今回紹介するのは、ハラカミがまだ10代だった1989年頃から2006年までの17年間で表に出ることのなかった音源をまとめた「レア音源集」アルバム。寄せ集めとも言い換えられるような大雑把なコンセプトの作品で、ハラカミ自身もこのアルバムを「在庫処分」と卑下するようなコメントを添えていますが、ぼくにとってはハラカミの中でも特に好きなアルバムだったりします。
最近は記事の更新頻度がめっきり下がって、色々と思い入れの強いアルバムばかり紹介しているので評価の甘々っぷりが目立ちますが、あくまで超主観的なレビューブログなのでご容赦ください。
というより最近は暇な時はレビューを書かずにひたすら未視聴のアルバムを聴いて星を付けることばかりしていたので、単純に評価を付けただけのアルバムが気づけば200枚も溜まっていました。少しずつ感想を書いて放出していきたいと思います。
[全曲レビュー]
1. にじぞう ★★★★☆
イメージでいうと柔らかくて丸みのある音が跳ね回っているような曲。しかししっかりと芯のあるサウンドなので、グルーヴを体で感じられてとても気持ちの良い耳触りです。メロディは90年代テクノの硬派な要素を残しつつサウンドに合ったポップなものとなっています。
2. あるテーマ ★★★★★
ポップでしっとりした空気感。それでいて気分が段々と高揚していくような息を巻く展開が素晴らしい1曲です。コードの気持ちよさと跳ね回るリズムに意識を飲まれて実に良い。
3. いとぐち ★★★★
M2から共通の独特な半音感のあるコードシンセはそのままに、畝ねるベースラインがよく聴こえる低音の響くクールな1曲です。パラパラと落ちては消えていく高音が雨のような温度感で素敵。
4. まちぶせ ★★★★
一転してダンサブルなパーカッションとファンクに畝ねるシンセがカッコいい一曲。ところどころに挟まれるピカピカしたSEがポップな遊び心を感じさせて素敵です。
5. わすれもの ★★★★☆
ループの中に様々な展開が交差する渋い一曲。ハラカミ風トランスとでも言えばいいのか、シンプルながら鮮やかなアレンジと音の耳障りの良さ、そして個性的な半音感でトリップしそうになります。
6. きえたこい ★★★☆
コロッとした音の粒が波のように曲の底で漂っている、そんなイメージ。楽しさと儚さが入り混じるような楽曲で、曲名の妙を感じました。
7. おかし ★★★★☆
今作最長の9分半。シニカルなコード進行で緊張感のある雰囲気の曲です。ディープパープルを彷彿とさせるシンセ音が堪らない。
8. おむかえ ★★★☆
音の波紋が次々広がっていくような、流れるような一曲。ハットのこ気味良さは雫が落ちる様を描いているようなイメージが沸きます。
9. めばえ ★★★
出だしから全体の雰囲気までM3とほぼ全く同じで、加えてM3よりも2分ほど短い楽曲。なので、おそらくM3の前身にあたる作品だと思います。ラストに向けて最後のクールダウン。
10. さようなら ★★★★☆
機械的で無機質なリフと展開がこの上ない寂寥を感じさせる一曲。初めて聴いた時からとても好きだった楽曲ですが、ハラカミが亡くなってからはimoutoidの「PART3」同様、聴く度にこみ上げるものを感じるようになりました。胸に残る名曲です。
[総評]
歌モノがJ-POPという名でメジャーシーンを駆け回る中、インストのエレクトロニカという、決して広い層が聴きたがらないような狭く無機質なジャンルでハラカミはPOPを紡ぎ出した。その音はとてもキャッチーで、どこか温かみがあり、彼の「生」を感じさせます。彼の他のアルバムである「[lust]」や「ゆうげ」なども、アルバムを通した芯のあるテーマで素晴らしい作品であると感じるのですが、このアルバム「わすれもの」は、彼の生涯通しての音楽、その時その時に残した彼なりのポップさが一つに繋がれたような、そんな大きく深い思いが芯に込められているような気がして、どうにも心惹かれて止まないのです。聴けば聴くほど味わい深くなって、まだまだ多くの気づきを見つけさせてくれそうな、そんな名盤。
★★★★☆
しかし2011年の7月27日に脳出血のため急逝。享年40。
未だに彼の死を受け入れきれていない自分ですが、この場をもって改めて冥福を願いたいと思います。
ハラカミの作風は主にテクノ・エレクトニカ系に傾倒しており、オリジナルアルバムの他にはリミックスアルバムなども出していて、どれもユニークな作品が取り揃っています。
そんな中今回紹介するのは、ハラカミがまだ10代だった1989年頃から2006年までの17年間で表に出ることのなかった音源をまとめた「レア音源集」アルバム。寄せ集めとも言い換えられるような大雑把なコンセプトの作品で、ハラカミ自身もこのアルバムを「在庫処分」と卑下するようなコメントを添えていますが、ぼくにとってはハラカミの中でも特に好きなアルバムだったりします。
最近は記事の更新頻度がめっきり下がって、色々と思い入れの強いアルバムばかり紹介しているので評価の甘々っぷりが目立ちますが、あくまで超主観的なレビューブログなのでご容赦ください。
というより最近は暇な時はレビューを書かずにひたすら未視聴のアルバムを聴いて星を付けることばかりしていたので、単純に評価を付けただけのアルバムが気づけば200枚も溜まっていました。少しずつ感想を書いて放出していきたいと思います。
[全曲レビュー]
1. にじぞう ★★★★☆
イメージでいうと柔らかくて丸みのある音が跳ね回っているような曲。しかししっかりと芯のあるサウンドなので、グルーヴを体で感じられてとても気持ちの良い耳触りです。メロディは90年代テクノの硬派な要素を残しつつサウンドに合ったポップなものとなっています。
2. あるテーマ ★★★★★
ポップでしっとりした空気感。それでいて気分が段々と高揚していくような息を巻く展開が素晴らしい1曲です。コードの気持ちよさと跳ね回るリズムに意識を飲まれて実に良い。
3. いとぐち ★★★★
M2から共通の独特な半音感のあるコードシンセはそのままに、畝ねるベースラインがよく聴こえる低音の響くクールな1曲です。パラパラと落ちては消えていく高音が雨のような温度感で素敵。
4. まちぶせ ★★★★
一転してダンサブルなパーカッションとファンクに畝ねるシンセがカッコいい一曲。ところどころに挟まれるピカピカしたSEがポップな遊び心を感じさせて素敵です。
5. わすれもの ★★★★☆
ループの中に様々な展開が交差する渋い一曲。ハラカミ風トランスとでも言えばいいのか、シンプルながら鮮やかなアレンジと音の耳障りの良さ、そして個性的な半音感でトリップしそうになります。
6. きえたこい ★★★☆
コロッとした音の粒が波のように曲の底で漂っている、そんなイメージ。楽しさと儚さが入り混じるような楽曲で、曲名の妙を感じました。
7. おかし ★★★★☆
今作最長の9分半。シニカルなコード進行で緊張感のある雰囲気の曲です。ディープパープルを彷彿とさせるシンセ音が堪らない。
8. おむかえ ★★★☆
音の波紋が次々広がっていくような、流れるような一曲。ハットのこ気味良さは雫が落ちる様を描いているようなイメージが沸きます。
9. めばえ ★★★
出だしから全体の雰囲気までM3とほぼ全く同じで、加えてM3よりも2分ほど短い楽曲。なので、おそらくM3の前身にあたる作品だと思います。ラストに向けて最後のクールダウン。
10. さようなら ★★★★☆
機械的で無機質なリフと展開がこの上ない寂寥を感じさせる一曲。初めて聴いた時からとても好きだった楽曲ですが、ハラカミが亡くなってからはimoutoidの「PART3」同様、聴く度にこみ上げるものを感じるようになりました。胸に残る名曲です。
[総評]
歌モノがJ-POPという名でメジャーシーンを駆け回る中、インストのエレクトロニカという、決して広い層が聴きたがらないような狭く無機質なジャンルでハラカミはPOPを紡ぎ出した。その音はとてもキャッチーで、どこか温かみがあり、彼の「生」を感じさせます。彼の他のアルバムである「[lust]」や「ゆうげ」なども、アルバムを通した芯のあるテーマで素晴らしい作品であると感じるのですが、このアルバム「わすれもの」は、彼の生涯通しての音楽、その時その時に残した彼なりのポップさが一つに繋がれたような、そんな大きく深い思いが芯に込められているような気がして、どうにも心惹かれて止まないのです。聴けば聴くほど味わい深くなって、まだまだ多くの気づきを見つけさせてくれそうな、そんな名盤。
★★★★☆
category: 日本 - テクノ、ニカ系
Klaus Nomi「Simple Man」(1982) レビュー
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クラウス・ノミは1944年頃ドイツのバイエルン州で生まれ、少年時代にアメリカのソプラノ歌手であるマリア・カラスに影響を受け自身もソプラノ歌手を目指し、ベルリンの音楽学校を卒業してから歌手活動に勤しんでいました。
1979年頃にデヴィッド・ボウイのバックコーラス(兼ダンサー)としてその奇抜なファッションと確かな実力でパートナーのジョーイ・アリアスと共に脚光を浴び、1981年に個人名義のアルバムをリリース。そして翌年に今作である2ndを続けざまにリリースしました。(ボウイはノミの個性を気に入って自らバックコーラスの参加を希望したそうで、やはり見る目も一流だと思います)
しかし2ndアルバムリリース後の1983年、AIDS発症により惜しくも亡くなってしまいました。彼はAIDSで死亡した最初の著名人としても知られているそうです。
彼の歌唱スタイルは前述したようにソプラノのオペラ歌唱が下地となっていますが、歌う楽曲はオペラを始めニューウェイヴ、ディスコ、ダンスなど様々なジャンルに挑戦しています。そこが彼の大きな特徴でもありますね。
ジャケットから漂う際物感で敬遠される方もいらっしゃるかとは思いますが、素晴らしい個性と音楽性が詰まった1枚です。どうか一聴してみてください。
それでは以下全曲レビュー&総評。
[全曲レビュー]
1. From Beyond ★★★☆
退廃的で静かなプロローグ。無機質な雰囲気があり、黄泉の国にさ迷い込んだような錯覚を覚えます。
2. After The Fall ★★★★☆
サビの開放が印象的な1曲。明るい曲調の中にどこか哀愁を感じるのはノミの魂がこもった歌唱のせいでしょうか。
3. Just One Look ★★★★
リンダ・ロンシュタットの楽曲のカバー。原曲よりもテンポが速く、シンセがポコポコとスカのようなノリで刻まれる楽しい1曲です。
4. Falling In Love Again ★★★★
こちらはマレーネ・ディートリッヒのカバー。レトロでムーディーな原曲とはかけ離れ、テクノな音作りの奇妙な楽曲に仕上がっています。ノミの歌声に合わせた面白い編曲。
5. Icurok ★★★
クラフトワークを彷彿とさせる渋いテクノポップ。左右で高音と低音のダブルボーカルに挑戦しています。ただ歌は少なくほぼインストですね。普通にカッコいいですが地味に感じたのでこの評価。
6. Rubberband Lazer ★★★★
ファンタジーミュージカルで妖精達が元気に行進している様をイメージさせるノリの良い一曲。勇ましく楽しそうな歌声も良いですね。
7. Wayward Sister ★★★★
一転して荘厳な雰囲気漂う一曲。短い尺の中で切迫された緊張感を感じます。
8. Ding Dong ★★★★
ミュージカル映画「オズの魔法使い」の挿入歌のカバー。全ての役を一人でノリノリに演じきっています。
9. Three Wishes ★★★☆
ニューウェイヴ感全開の疾走感ある一曲。後半からの流れが好きです。
10. Simple Man ★★★★★
今作の表題曲及びベストナンバー。ノミの楽曲の中でも屈指のキャッチーさであると思います。2番サビ後からの明るさと寂しさが満ちた展開がとても素晴らしい。
11. Death ★★★★☆
ヘンリー・パーセルの歌曲『ディドとエネアス』から選曲された一曲。まるで自分の死を予見していたかのような選曲と鬼気迫るような歌声で、現実から切り離されどこか底へ沈んでいくような感覚に襲われます。まさに絶唱。
12. Return ★★★★
ラストは物悲しさを感じずにはいられない退廃的な雰囲気漂うアカペラ。これまでの少なからず明るさに溢れた流れが遠い過去のように感じられる、そんな最後。彼は死から戻ってきて、どこへ行ってしまったのか。
[総評]
全体の流れが抑揚に富んでおり、一つのミュージカルを聴き終えたような寂寥を感じる余韻の残るアルバムでした。歌唱力の幅に囚われないほどの気迫を感じるオペラソング、聴く者を笑顔にさせるポップソング、そしてその中間点とも言える明るさと悲哀が溢れるM2、M10のような楽曲・・・個人的にこれらはノミソングというジャンルに入れたいです。喜怒哀楽に満ちた様々な楽曲が収束するは死のように冷たい闇の中。図らずもこのアルバムはノミの人生を象徴してしまった、そんな気がします。人類から去っていった彼に最大の敬意を。
★★★★
1979年頃にデヴィッド・ボウイのバックコーラス(兼ダンサー)としてその奇抜なファッションと確かな実力でパートナーのジョーイ・アリアスと共に脚光を浴び、1981年に個人名義のアルバムをリリース。そして翌年に今作である2ndを続けざまにリリースしました。(ボウイはノミの個性を気に入って自らバックコーラスの参加を希望したそうで、やはり見る目も一流だと思います)
しかし2ndアルバムリリース後の1983年、AIDS発症により惜しくも亡くなってしまいました。彼はAIDSで死亡した最初の著名人としても知られているそうです。
彼の歌唱スタイルは前述したようにソプラノのオペラ歌唱が下地となっていますが、歌う楽曲はオペラを始めニューウェイヴ、ディスコ、ダンスなど様々なジャンルに挑戦しています。そこが彼の大きな特徴でもありますね。
ジャケットから漂う際物感で敬遠される方もいらっしゃるかとは思いますが、素晴らしい個性と音楽性が詰まった1枚です。どうか一聴してみてください。
それでは以下全曲レビュー&総評。
[全曲レビュー]
1. From Beyond ★★★☆
退廃的で静かなプロローグ。無機質な雰囲気があり、黄泉の国にさ迷い込んだような錯覚を覚えます。
2. After The Fall ★★★★☆
サビの開放が印象的な1曲。明るい曲調の中にどこか哀愁を感じるのはノミの魂がこもった歌唱のせいでしょうか。
3. Just One Look ★★★★
リンダ・ロンシュタットの楽曲のカバー。原曲よりもテンポが速く、シンセがポコポコとスカのようなノリで刻まれる楽しい1曲です。
4. Falling In Love Again ★★★★
こちらはマレーネ・ディートリッヒのカバー。レトロでムーディーな原曲とはかけ離れ、テクノな音作りの奇妙な楽曲に仕上がっています。ノミの歌声に合わせた面白い編曲。
5. Icurok ★★★
クラフトワークを彷彿とさせる渋いテクノポップ。左右で高音と低音のダブルボーカルに挑戦しています。ただ歌は少なくほぼインストですね。普通にカッコいいですが地味に感じたのでこの評価。
6. Rubberband Lazer ★★★★
ファンタジーミュージカルで妖精達が元気に行進している様をイメージさせるノリの良い一曲。勇ましく楽しそうな歌声も良いですね。
7. Wayward Sister ★★★★
一転して荘厳な雰囲気漂う一曲。短い尺の中で切迫された緊張感を感じます。
8. Ding Dong ★★★★
ミュージカル映画「オズの魔法使い」の挿入歌のカバー。全ての役を一人でノリノリに演じきっています。
9. Three Wishes ★★★☆
ニューウェイヴ感全開の疾走感ある一曲。後半からの流れが好きです。
10. Simple Man ★★★★★
今作の表題曲及びベストナンバー。ノミの楽曲の中でも屈指のキャッチーさであると思います。2番サビ後からの明るさと寂しさが満ちた展開がとても素晴らしい。
11. Death ★★★★☆
ヘンリー・パーセルの歌曲『ディドとエネアス』から選曲された一曲。まるで自分の死を予見していたかのような選曲と鬼気迫るような歌声で、現実から切り離されどこか底へ沈んでいくような感覚に襲われます。まさに絶唱。
12. Return ★★★★
ラストは物悲しさを感じずにはいられない退廃的な雰囲気漂うアカペラ。これまでの少なからず明るさに溢れた流れが遠い過去のように感じられる、そんな最後。彼は死から戻ってきて、どこへ行ってしまったのか。
[総評]
全体の流れが抑揚に富んでおり、一つのミュージカルを聴き終えたような寂寥を感じる余韻の残るアルバムでした。歌唱力の幅に囚われないほどの気迫を感じるオペラソング、聴く者を笑顔にさせるポップソング、そしてその中間点とも言える明るさと悲哀が溢れるM2、M10のような楽曲・・・個人的にこれらはノミソングというジャンルに入れたいです。喜怒哀楽に満ちた様々な楽曲が収束するは死のように冷たい闇の中。図らずもこのアルバムはノミの人生を象徴してしまった、そんな気がします。人類から去っていった彼に最大の敬意を。
★★★★
category: ドイツ - テクノ、ニカ系
2010年代ベストトラック30選(邦楽)
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自分の中で決めた縛りは、1アーティスト(1作曲家)につき最大3曲まで。
なぜ1曲縛りではないのかというと、自分が好きな2010年代の音楽を調べてみたらかなり偏っていたからですね笑
普段は年代を遡って探しているせいもあってか、最近の音楽でハマったものは自分の趣味であるアニメソングやVOCALOIDが多くを占めていました。
それでは、1曲1曲に軽いコメントでも添えながら紹介していこうと思います。
並びはあいうえお順で。
1. ASIAN KUNG-FU GENERATION - 迷子犬と雨のビート
アニメ「四畳半神話大系」のOP。ブラスが爽やか。
2. EZFG - サイバーサンダーサイダー
癖になるダンサブルなバキバキサウンド。
3. 石川智晶 - 不完全燃焼
こちらの記事で紹介済み。
4. 上坂すみれ - 七つの海よりキミの海
アニメ「波打際のむろみさん」のOP。変則的な展開と絶妙に織り交ぜられたロシアンメロディ。
5. 後ろから這いより隊G - 恋は渾沌の隷也
アニメ「這いよれ!ニャル子さんW」のOP。一度聴いたら病みつきになる疾走感。
6. ウルフルズ - あーだこーだそーだ!
ドラマ「アオイホノオ」のOP。作品に合った青春ロックといった感じ。歴代ウルフルズソングの中でも特に好き。
7. 岡村靖幸 - ビバナミダ
アニメ「スペース☆ダンディ」のOP。ブランクを感じさせぬ独創的でダンサブルで最高にポップな1曲。
8. きくお - ごめんね ごめんね
こちらの記事で紹介済み。
9. きくお - しかばねの踊り
幻想的な世界観。甘美なメロディ。
10. group_inou - THERAPY
不可思議で胡散臭さ全開の一曲。奇妙な中毒性。
11. group_inou - HEART
意味不明なのに切ない。シンセのリフが素晴らしい。
12. くるり - Liberty&Gravity
中東音楽を意識したサウンドを変態的な展開でジャパニーズポップに昇華した1曲。
13. shr - エス
シンプルながら絶妙な郷愁感のある歌詞とメロディ。
14. 情報処理部 (大久保瑠美, 津田美波, 種田梨沙) - せーのっ!
アニメ「ゆゆ式」のOP。作品に合った、淀みや陰りのない純水のような楽曲。
15. 情報処理部 (大久保瑠美, 津田美波, 種田梨沙) - セツナイロ
アニメ「ゆゆ式」のイメージソング。泣く。
16. 情報処理部 (大久保瑠美, 津田美波, 種田梨沙) - ミラクルファンシー
アニメ「ゆゆ式」のイメージソング。底なしに明るく元気になれる1曲。跳ねるようなストリングスが心地よい。
17. DE DE MOUSE - sweet gravity
天を仰ぐような感傷こみ上げるダンスポップ。
18. 怒髪天 - オトナノススメ
こちらの記事で紹介済み。
19. ピノキオピー - すろぉもぉしょん
レトロな歌謡的メロディと現代的なデジタルサウンドが混じり合う人生讃歌。
20. ピノキオピー - はっぴーべりーはっぴー
強烈な皮肉と風刺がポジティブに突き刺さるデジタルロック。
21. ピノキオピー - レアノ
郷愁感溢れる言葉選びが胸を引っ掻くピコピコロック。ていうか自分で縛っといてなんだけどピノキオピー氏の作品群から3曲だけしか選べないのが非常にしんどいです。
22. ふわりP - きょうもハレバレ
毒気がなくさっぱりとしたノリノリの1曲。日常をこれほど綺麗に汲み取れるふわりP氏は非常に貴重な存在だと思います。
23. 星野源 - Crazy Crazy
星野源的哲学が混じった歌詞が魅力的な1曲。ピアノの連弾が気持ち良く、思わず踊りたくなります。
24. 星野源 - 地獄でなぜ悪い
爆発的なノリの良さ。歌詞が非常に好き。
25. マキシマム ザ ホルモン - 予襲復讐
こちらの記事で紹介済み。
26. Mayumi Morinaga - Affection
アニメ「ゆゆ式」のED。正直涙なしには聴けない。いい歳してアニソンで泣くとは思わなかった。
27. みかくにんぐッ! (照井春佳, 松井恵理子, 吉田有里) - とまどい→レシピ
アニメ「未確認で進行形」のOP。弾み倒しなポップサウンドが気持ち良い。吉田有里さんは天性の声だと思います。
28. milktub - 有頂天人生
アニメ「有頂天家族」のOP。力強い歌声に力強い歌詞。2010年代屈指の青春パンク。
29. 米津玄師 - MAD HEAD LOVE
個性的で中毒性の高いサウンドとどこか哀愁のある歌詞。
30. わか, ふうり, すなお - カレンダーガール
アニメ「アイカツ!」のED。女児向けアニメと侮るなかれ、ポップなカットアップとキャッチーなメロディが織り成す耳心地の良い柔らかなサウンドが素晴らしいです。
以上、2010年代邦楽30選でした。普段の記事で取り上げてるような音楽とは少し外れたチョイスになったかと思います。この企画、普段チマチマとしか見せてない自分の趣味嗜好が全面に出てしまって恐ろしいですね。でも選んでて楽しかったです。
あ、でもアイカツは曲は選んだものの作品自体はほとんど知らないんですよね。アイカツファンの方にはここで謝罪を。ごめんなさい。
なぜ1曲縛りではないのかというと、自分が好きな2010年代の音楽を調べてみたらかなり偏っていたからですね笑
普段は年代を遡って探しているせいもあってか、最近の音楽でハマったものは自分の趣味であるアニメソングやVOCALOIDが多くを占めていました。
それでは、1曲1曲に軽いコメントでも添えながら紹介していこうと思います。
並びはあいうえお順で。
1. ASIAN KUNG-FU GENERATION - 迷子犬と雨のビート
アニメ「四畳半神話大系」のOP。ブラスが爽やか。
2. EZFG - サイバーサンダーサイダー
癖になるダンサブルなバキバキサウンド。
3. 石川智晶 - 不完全燃焼
こちらの記事で紹介済み。
4. 上坂すみれ - 七つの海よりキミの海
アニメ「波打際のむろみさん」のOP。変則的な展開と絶妙に織り交ぜられたロシアンメロディ。
5. 後ろから這いより隊G - 恋は渾沌の隷也
アニメ「這いよれ!ニャル子さんW」のOP。一度聴いたら病みつきになる疾走感。
6. ウルフルズ - あーだこーだそーだ!
ドラマ「アオイホノオ」のOP。作品に合った青春ロックといった感じ。歴代ウルフルズソングの中でも特に好き。
7. 岡村靖幸 - ビバナミダ
アニメ「スペース☆ダンディ」のOP。ブランクを感じさせぬ独創的でダンサブルで最高にポップな1曲。
8. きくお - ごめんね ごめんね
こちらの記事で紹介済み。
9. きくお - しかばねの踊り
幻想的な世界観。甘美なメロディ。
10. group_inou - THERAPY
不可思議で胡散臭さ全開の一曲。奇妙な中毒性。
11. group_inou - HEART
意味不明なのに切ない。シンセのリフが素晴らしい。
12. くるり - Liberty&Gravity
中東音楽を意識したサウンドを変態的な展開でジャパニーズポップに昇華した1曲。
13. shr - エス
シンプルながら絶妙な郷愁感のある歌詞とメロディ。
14. 情報処理部 (大久保瑠美, 津田美波, 種田梨沙) - せーのっ!
アニメ「ゆゆ式」のOP。作品に合った、淀みや陰りのない純水のような楽曲。
15. 情報処理部 (大久保瑠美, 津田美波, 種田梨沙) - セツナイロ
アニメ「ゆゆ式」のイメージソング。泣く。
16. 情報処理部 (大久保瑠美, 津田美波, 種田梨沙) - ミラクルファンシー
アニメ「ゆゆ式」のイメージソング。底なしに明るく元気になれる1曲。跳ねるようなストリングスが心地よい。
17. DE DE MOUSE - sweet gravity
天を仰ぐような感傷こみ上げるダンスポップ。
18. 怒髪天 - オトナノススメ
こちらの記事で紹介済み。
19. ピノキオピー - すろぉもぉしょん
レトロな歌謡的メロディと現代的なデジタルサウンドが混じり合う人生讃歌。
20. ピノキオピー - はっぴーべりーはっぴー
強烈な皮肉と風刺がポジティブに突き刺さるデジタルロック。
21. ピノキオピー - レアノ
郷愁感溢れる言葉選びが胸を引っ掻くピコピコロック。ていうか自分で縛っといてなんだけどピノキオピー氏の作品群から3曲だけしか選べないのが非常にしんどいです。
22. ふわりP - きょうもハレバレ
毒気がなくさっぱりとしたノリノリの1曲。日常をこれほど綺麗に汲み取れるふわりP氏は非常に貴重な存在だと思います。
23. 星野源 - Crazy Crazy
星野源的哲学が混じった歌詞が魅力的な1曲。ピアノの連弾が気持ち良く、思わず踊りたくなります。
24. 星野源 - 地獄でなぜ悪い
爆発的なノリの良さ。歌詞が非常に好き。
25. マキシマム ザ ホルモン - 予襲復讐
こちらの記事で紹介済み。
26. Mayumi Morinaga - Affection
アニメ「ゆゆ式」のED。正直涙なしには聴けない。いい歳してアニソンで泣くとは思わなかった。
27. みかくにんぐッ! (照井春佳, 松井恵理子, 吉田有里) - とまどい→レシピ
アニメ「未確認で進行形」のOP。弾み倒しなポップサウンドが気持ち良い。吉田有里さんは天性の声だと思います。
28. milktub - 有頂天人生
アニメ「有頂天家族」のOP。力強い歌声に力強い歌詞。2010年代屈指の青春パンク。
29. 米津玄師 - MAD HEAD LOVE
個性的で中毒性の高いサウンドとどこか哀愁のある歌詞。
30. わか, ふうり, すなお - カレンダーガール
アニメ「アイカツ!」のED。女児向けアニメと侮るなかれ、ポップなカットアップとキャッチーなメロディが織り成す耳心地の良い柔らかなサウンドが素晴らしいです。
以上、2010年代邦楽30選でした。普段の記事で取り上げてるような音楽とは少し外れたチョイスになったかと思います。この企画、普段チマチマとしか見せてない自分の趣味嗜好が全面に出てしまって恐ろしいですね。でも選んでて楽しかったです。
あ、でもアイカツは曲は選んだものの作品自体はほとんど知らないんですよね。アイカツファンの方にはここで謝罪を。ごめんなさい。
category: その他